コミュニティホスピタルを為すためには、コミュニティの中で成らねばならない
「うちもコミュニティホスピタルに」その「コミュニティ」って、どこの誰向けですか?
こんにちは、にしむらです。先日、以下のような記事を投稿しました。
病院は、地域のインフラになれるのか
そこでは中小病院の地域における新たなポジション「コミュニティホスピタル」についてちょびっとだけ解説しました。
今回は、その話に関連し、「今後地域(コミュニティ)でポジションをとっていきたい人」に向け「認められたければ信頼されろ」というテーマでのお話をします。
基本的に医療系の話が多いですが、普遍的なところはクリエイターの方々にも参考になるかもしれません。
ここ数年、中小病院の経営戦略として「コミュニティホスピタルへの転換」が注目を集めています。
病床機能の見直し、総合診療体制の整備、地域包括ケアへの参画。
学会やセミナーでもこのテーマが頻繁に取り上げられるようになりました。
経営改善を図りたい。患者数を増やしたい。地域に必要とされる病院でありたい。
その思いからコミュニティホスピタルという看板を掲げること自体は、間違っていません。
ただ、ひとつだけ問いたいことがあります。
その「コミュニティホスピタル」は、誰が認めたものでしょうか。
名前を変えても、いきなり見え方は変わらない
コミュニティホスピタルへの転換と聞くと、多くの方は院内の体制変更を思い浮かべます。
病棟の機能転換、診療科の再編、回復期や在宅支援の強化。もちろんこれらは重要な施策です。
しかし、院内をどれだけ整えたところで、地域の住民がそれを知らなければ意味がありません。
紹介元のクリニックや患者がその変化を実感していなければ、地域での医療動線は変わりません。
「コミュニティホスピタル」とは、自称するものではありません。
地域というコミュニティの中で、顔が見え、信頼が積み重なり、「あそこに相談すれば何とかなる」と住民や連携先から自然に想起される存在になって、初めて成立する概念です。
つまり、コミュニティホスピタルを「為す」ためには、まずコミュニティの中で「成る」必要があるのです。
「外に出る」ことでしか得られない信頼があります
僕自身、旭川市の中小病院で総合診療医として働きながら、意識的に病院の外へ出ることを続けてきました。
たとえば、地元紙である北海道新聞に病院の取り組みが掲載されたことがあります。
記事になったこと自体が目的ではありません。
重要なのは、その記事を読んだ地域の方々が「あの病院、こういうこともやっているんだ」と知ってくれたことです。
院内でどれだけ体制を整えても、地域住民の認知がなければ届きません。
メディアを通じた発信は、病院と地域をつなぐ回路のひとつになります。
また、地域の町内会や介護事業所を対象にした健康講話や在宅医療に関する講演も続けています。
それぞれは参加者が数十名の、小さな集まりです。
しかし、そこで「あの病院の先生が来てくれた」「困ったときはあそこに連絡すればいいんだ」という接点が生まれます。
この積み重ねこそが、コミュニティの中に病院を位置づけていく作業にほかなりません。
医学生や研修医の教育活動を地域の中で行うことも、間接的ですが大きな効果があります。
若い医師が地域で学ぶ姿は、住民に「この病院は未来を考えている」という安心感を与えます。
教育は人材確保の手段であると同時に、地域への意思表示でもあるのです。
院内改革と地域活動は、車の両輪の関係
誤解のないように申し上げると、院内の体制整備を否定しているわけではありません。病棟の機能転換も、総合診療体制の構築も、コミュニティホスピタルの基盤として不可欠です。
ただし、それだけでは片輪走行になります。
院内を整える仕事と、地域の中に出ていく仕事は、車の両輪です。
どちらか一方だけでは、コミュニティホスピタルとして走り続けることはできません。
そして現実には、多くの病院が院内改革には力を入れる一方、地域活動への投資は後回しにしがちです。
「忙しいから」「人がいないから」「効果が見えにくいから」。気持ちはよくわかります。
しかし、地域に出ないままコミュニティホスピタルを名乗ることは、看板だけ掛け替えて中身が伴わない状態と同じではないでしょうか。
まず、病院の外に一歩出ることから
コミュニティホスピタルへの転換は、院長室や会議室の中だけでは完結しません。
町内会の集まりに顔を出す。地域の介護職と一緒に勉強会を開く。地元メディアに病院の取り組みを伝える。
医学生を地域に連れ出す。どれも特別なことではありませんし、大きな予算も必要ありません。
必要なのは、「外に出る」という意思決定だけです。
コミュニティホスピタルとは、地域から与えられる称号です。
それを得るために、まず自分たちがコミュニティの一員として立つこと。
その覚悟がなければ、どんな経営戦略も空回りします。
本気でコミュニティホスピタルを目指すのであれば、まず病院の玄関から外に出てみてください。
すぐそこの地域と接点をつくること。それこそが重要なのです。




経営改善や病床機能転換といった院内改革を急ぐあまり、効果が数字で見えにくい地域活動が後回しになる実態は、マネジメントの現場でも非常によく直面する課題です。コミュニティホスピタルという概念が、院内体制の変更という自己満足に留まらず、地域から「あそこに相談すれば何とかなる」と想起される信頼の積み重ねの先に成立するという指摘は、極めて実務的で本質的です。院内改革と地域活動を「車の両輪」として駆動させるためのトップの意思決定と、玄関から外へ出る覚悟の重要性を改めて強く認識させられました。