腹痛で受診するとき、最初に伝える三つのこと
診察室で言いたいことを言えるように

皆さんおはようございます。にしむらです。
今日は、腹痛で病院を受診するときの話を書きます。
お腹が痛くて病院に行ったのに、うまく話せなかった。
痛みのつらさを伝えたいのに、質問が次々に来て、言いたかったことが途中で言えなくなってしまった。
検査が必要なのか、様子を見てよいのかもよくわからず、不安が残った。
そんな経験をした方は、いるのではないかと思います。
僕は外来で、腹痛の患者さんをしょっちゅう診ます。
腹痛は、とても身近な症状です。
一方で、受診した人にとっては、かなり不安になりやすい症状です。
お腹の中は、自分では見えません。
いつもの腹痛なのか。
悪い病気が隠れているのか。
このまま帰ってよいのか。
そこがわからないから、不安になります。
この記事で伝えたいことは、一つです。
腹痛で受診するときは、最初に「いつから、どこが、どう変わったか」を伝えると、自分の痛みを診察で扱ってもらいやすくなります。
上手に話す必要はありません。
長く説明する必要もありません。
まず、この三つをつたえればばっちりです。

なぜ、言いたいことを伝えても医者の反応は微妙なのか
腹痛で受診した人がまず伝えたいのは、痛みのつらさです。
どれくらい痛いのか。
どれくらい不安なのか。
いつもの腹痛と違うのか。
仕事や家事や睡眠に、どれくらい支障が出ているのか。
これは、とても大事な情報です。
ただ、診察室では、患者さんが話したい順番と、診察で確認が進む順番がずれることがあります。
患者さんは、痛みのつらさから話したい。
診察では、急いで対応が必要な腹痛かどうかを見分けるために、発症の時期や場所や変化から確認される。
ここでお互いの認識がずれたままだと、聞きたい情報が聞けない、伝えたい話が遮られる、となってしまいます。
最初に伝える情報を少しだけ整えておくと、その後のやりとりがスムーズになります。
一つ目は、いつから痛いか
まず伝えるとよいのは、いつから痛いかです。
今朝からなのか。
昨日の夜からなのか。
数日前から少しずつ悪くなっているのか。
急に強い痛みが来たのか。
腹痛では、時間の流れが大事です。
急に始まった痛みなのか。
だんだん強くなっている痛みなのか。
よくなったり悪くなったりしている痛みなのか。
この違いで、診察で確認することが変わります。
正確な時刻まで覚えていなくても大丈夫です。
朝から、昼ごろから、昨日の夕食後から、数日前から。
それくらいの言い方でも十分です。
二つ目は、どこが痛いか
次に、どこが痛いかです。
みぞおちなのか。
おへその周りなのか。
右下なのか。
下腹部なのか。
背中まで響くのか。
お腹全体が痛い、でも構いません。
指で示せる場所があれば、それを伝えるとかなりヒントになります。
最初はおへその周りだったけれど、あとから右下に移った。
みぞおちが痛いと思っていたら、背中にも響いてきた。
下腹部が重い感じから始まった。
こうした場所の情報は、痛みを診察につなげる手がかりになります。
三つ目は、どう変わったか
三つ目は、痛みがどう変わったかです。
強くなっているのか。
弱くなっているのか。
波があるのか。
ずっと同じ強さなのか。
食事で悪くなるのか。
排便で楽になるのか。
動くと響くのか。
吐き気や発熱があとから出てきたのか。
痛みそのものだけでなく、痛みの変化も大事です。
痛みが移動した。
痛み方が変わった。
発熱や吐き気が加わった。
便や尿の様子が変わった。
こうした変化があるときは、最初に伝えてください。
痛みの強さは?
ここまで読むと、痛みのつらさは後回しでよいのか、と思うかもしれません。
そうではありません。
痛みの強さは大事です。
不安も大事です。
生活にどれくらい困っているかも、診療に必要な情報です。
ただ、腹痛では、痛みの強さだけでは判断できないことがあります。
とても強く痛くても、すぐに命に関わる病気ではない場合があります。
逆に、本人はたいしたことないと思っていても、急いで対応した方がよい病気が隠れることもあります。
だから、痛みの強さと一緒に、いつから、どこが、どう変わったかを伝えることが役に立ちます。
「痛みは10段階で7くらいです。昨日の夜から右下が痛くなって、だんだん強くなっています」
たとえば、こういう伝え方です。
これなら、痛みのつらさも、痛みの経過も、同時に伝わります。
余裕があれば、一緒に伝えること
余裕があれば、次のことも伝えてください。
熱があるか。
吐いたか。
下痢や便秘があるか。
血便があるか。
尿が近い、痛い、血が混じるなどの変化があるか。
妊娠の可能性や月経との関係があるか。
これまでに手術を受けたことがあるか。
いつも飲んでいる薬があるか。
全部を完璧に話す必要はありません。
メモにして持っていってもいいです。
スマホに箇条書きで残しておくだけでもいいです。
大事なのは、上手に話すことではありません。
「いつから、どこが、どう変わったか」の三つが伝われば、あとは診察の中で一緒に整理できます。
検査してほしい不安も、言っていい
腹痛で受診したとき、検査をしてほしいと思うことがあります。
それは自然なことです。
お腹の中は自分で見えません。
悪い病気ではないかと不安になります。
ただ、腹痛の診察では、全員に同じ検査をするわけではありません。
医師が危険なサインは乏しいと判断すれば、まず経過を見ることがあります。
逆に、見逃したくない可能性が残ると判断すれば、血液検査、尿検査、画像検査などを考えます。
ここで大事なのは、検査をするかしないかだけではありません。
自分が何を見ればよいのかを、受診した人がわかることです。
不安が残るときは、こう聞いてよいと思います。
今日の時点で、急いで対応が必要な腹痛の可能性は低そうですか。
どんな症状が出たら、もう一度受診した方がいいですか。
痛みが続く場合、次に何を確認しますか。
この三つは、診察の後に自分を守るための質問です。

異常なしでも、痛みは本物です
検査で大きな異常が見つからないこともあります。
「異常なし」だけで説明が終わると、痛みが残っている人は、次にどうしたらよいかわからなくなります。
検査に異常がないことと、痛みがないことは同じではありません。
腹痛には、便秘、胃腸の動き、食事、薬、月経、睡眠、ストレスなど、いくつもの要素が関わります。
検査で急いで対応が必要な病気が見つからなかったあとも、痛みの原因や対処を考える必要があります。
もし異常なしと言われても痛みが続くなら、次に何をすればいいのかを聞いてみてください。
便通を整えるのか。
食事との関係を見るのか。
薬を調整するのか。
ここを聞いておくと、次の受診までの期間がただの観察ではなく、診断を絞り込むための期間に変わります。
次に受診するときのために
腹痛で受診するとき、全部をきれいに説明する必要はありません。
まずは三つ。
いつから。
どこが。
どう変わったか。
この三つを先に伝えると、医師とのコミュニケーションが円滑になります。
あなたの痛みは、あなたが一番よくわかっています。
その痛みを診察で扱うために、伝える順番を少し整える。
次にお腹が痛くて受診するときは、この三つだけでもメモして持っていってください。
いつから、どこが、どう変わったか。
それだけで、「話したかったことを話せなかった」という感覚は、少し減らせるかもしれません。



にしむら先生、外来診療における患者さんと医師のコミュニケーションのズレを解消する、非常に分かりやすく本質的な解説をありがとうございます。
日々、病院の事務長として現場のマネジメントに携わっていますが、外来で「言いたいことがうまく伝わらなかった」という不安や不満が残ってしまうケースは少なくありません。患者さんのつらさと医師の診断プロセスを、この「3つの要素」で綺麗に繋ぐ動線は、外来の満足度向上や医療安全の観点からも非常に大切な視点だと深く頷きました。診察後に自分を守るための3つの質問の提示も、とても有益で勉強になります。